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基地とは何か。その答えを身をもって知っているのは、そこに住んでいる人々・・・ 金口木舌 八葉蓮華

2009/11/21 23:31
 1968年をテーマにした作品が相次いで出版されている。小熊英二さんの『1968』(上下、新曜社)、池澤夏樹さんの『カデナ』(新潮社)だ

 小熊さんは全国の大学を席巻した68年の全共闘運動の全体像に迫る。この年、フランスでも学生運動は激しさを増し、米国では人種差別と闘ったキング牧師が凶弾に倒れた

 池澤さんはベトナム戦争のさなか、68年の沖縄を舞台に選んだ。連日のように嘉手納基地からB52戦略爆撃機が北爆へ向かった。戦火にさらされる人を一人でも救おうとベトナム人、その知人の沖縄人、嘉手納基地勤務の女性曹長、ロックバンドの青年4人によるスパイ物語

 沖縄で68年といえば、日本復帰運動が頂点に達し初の公選主席が誕生した。その直後の11月19日、嘉手納基地でB52が墜落炎上。翌年2月に沖縄で戦後初のゼネスト実施に向け総抵抗の雰囲気に包まれていた

 池澤さんの作品は住民側の視点ではなく、少しずらしたところが新鮮だ。B52が炎上する場面で女性軍曹にこう語らせる。「爆弾は出撃計画に書き込む数字でしかなく、弾薬集積所からトレーラーで運ぶ荷でしかなく、高い空から落とすものでしかなかった。(中略)こんなに燃えるとは知らなかった」

 基地とは何か。その答えを身をもって知っているのは政治家でも軍人でもなくだ。

 金口木舌 琉球新報 2009年11月16日
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「県民の心は今一つになることができる」基地の連鎖を断ち切ろうという民意は強まるばかり・・・ 金口木舌

2009/11/20 23:58
 11日、歌手の長渕剛さんの弾き語りコンサートを宜野湾市で聴いた。熱気渦巻く会場で長渕さんは「沖縄は大好きだ」と何度も語り、「親知らず」という曲の歌詞にある「日本」を「沖縄」に変えて熱唱した

 「俺の祖国沖縄よ どうかアメリカに溶けないでくれ 誰もがわが子を愛するように(略)もっともっと自分を激しく愛し貫いてゆけ」。政治的な言葉はなかったが、沖縄はもっと自己主張せよ―というエールに聞こえた

 初来日したオバマ米大統領は、普天間飛行場の県内移設を早く履行するよう圧力をかけて日本を去ったが、失望するのはまだ早い。県内移設推進のよりどころにされていた県内の容認・推進派が方針を転じ、「県外」を求める世論の裾野(すその)は確実に広がっている

 1999年10月の県議会の県内移設要請決議を思い出す。与党自民党が提案し、怒号が飛び交う徹夜審議となった。提案者として野党の厳しい追及を突っぱねたのは当時の県連幹事長だった翁長雄志那覇市長だった

 翁長氏は先の県内移設に反対する大会で共同代表を務め、「県民の心は今一つになることができる」と訴え、大きな拍手を浴びた。そして、自民党県連も県外移設要求に舵(かじ)を切ろうとしている

 基地重圧の連鎖を断ち切ろうという民意は強まるばかりだ。臆(おく)することなく沖縄の主張を貫き、活路を開きたい。

 金口木舌 琉球新報 2009年11月15日
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「傘がない」リーダーシップと独断専行をはき違えている人が少なくない・・・ 金口木舌 八葉蓮華

2009/11/19 23:45
 リーダー不在。「失われた10年」といわれた1990年代半ばから耳にする言葉だ。裏返せば、強力なリーダーの登場を待ち望んでいるようだ

 米国に端を発した世界不況から抜け出せない今、リーダーシップと独裁または独断専行をはき違えている人が少なくないことだ。代表的な人物は「劇場型政治」を展開した小泉純一郎元首相だろう

 今夏、政権を掌中にした鳩山由紀夫首相や岡田克也外相らも指導者としての資質や力量が問われ始めている。前政権の児童手当増額策を「ばらまき」と批判したが、それを上回る子ども手当については「少子化対策」と開き直る

 岡田氏は普天間飛行場移設先に嘉手納基地統合案を打ち出した。地元の強い反発に耳を傾けるどころか持論の正当性を強弁する姿は駄々っ子だ。「民意」をかざすが生活者の視点が抜け落ちている

 70年代の井上陽水さんの代表曲『傘がない』が頭をよぎった。新聞やテレビで深刻に報じられる問題もあろうが、今、目の前の課題にどう対処すべきか―を問うている。現実を無視した施策は無策に等しいと言えるのではないか

 同様な事象は身近でも起きていないか。上司が持論を強弁し異見を封じては風通しが悪くなる。

 金口木舌 琉球新報 2009年11月14日
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国立劇場おきなわ「圧倒的な予算の縮減」劇場の運営法を再点検するきっかけ・・・ 金口木舌 八葉蓮華

2009/11/18 23:58
 東京都にある歌舞伎座では今、さよなら公演と銘打って「通し狂言 仮名手本忠臣蔵」を上演している。「さよなら」とあるのは、来年4月の公演を最後に建て替えられるためだ

 「歴史が消える」と反対意見もあるようだが、初日は多くのファンで満席だった。若者や外国人の姿も目立った。歌舞伎と並ぶ国指定重要文化財に組踊がある

 沖縄の伝統芸能にとって、歌舞伎座のような拠点は、開場6年目を迎えた「国立劇場おきなわ」だろう。過去5年の自主公演の入場者は6万8000人余で満席率59・8%。「満席率を採算が採れる65%以上に上げたい」と苦心する同劇場を思うと、歌舞伎座のにぎわいが、うらやましかった

 政府の行政刷新会議による事業仕分け作業がスタートした。独立行政法人日本芸術文化振興会の予算も対象となり「圧倒的な予算の縮減」と判定された。同振興会から事業委託を受けている国立劇場おきなわにも影響が出そうだ

 歌舞伎座の観劇料は1階桟敷席の1万8000円から3階B席の2500円までバラエティーに富んでいる。一幕だけ観劇できる「一幕見席」(1200円)もあった。専属の弁当屋もある

 組踊は、能や狂言などの芸術形式を採り入れながら沖縄独自の芸能として発展した。事業仕分けを、劇場の運営法を再点検するきっかけ、と前向きにとらえたい。

 金口木舌 琉球新報 2009年11月13日
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普天間飛行場の県外・国外移設を望んでいる「県民の声」を突き付けられた鳩山政権・・・ 金口木舌 八葉蓮

2009/11/17 23:20
 興南高校野球部監督の我喜屋優さんが社会人野球の選手だったころ、同じ企業の陸上部にハンマー投げの室伏重信さんがいたそうだ。のちに「アジアの鉄人」とまで呼ばれた人物だ

 室伏さんから「何か一つ一番になれ」と励まされた。我喜屋さんは体格差をはね返すため筋力を鍛え、レギュラーの座を手にしたという。11日付本紙で講演の記事が掲載された

 同じ紙面でハンドボールの世界的なプレーヤー、佐久川ひとみさんが紹介された。母校の浦添市沢岻小学校を訪ね、子どもたちに掛けた言葉は「自分に負けるか、苦しさを乗り越えて強くなるか」だった

 我喜屋さんは「逆境」を味方に付けろ、とアドバイスした。逆境に立って初めて、自身の真価が問われる。佐久川さんは日本代表の選考でライバルとのポジション争いに敗れた経験を語った。佐久川さんも逆境をバネにした

 2人は厚い壁にぶつかり、悩み苦しんでも、夢や目標をあきらめることはなかった。実現できる、と固く信じたから走り続けた。2倍にも3倍にも成長する力になったはずだ

 戦後64年も逆境に立たされてきた県民の7割が、普天間飛行場の県外・国外移設を望んでいる。実現を強く求める県民の声を突き付けられた鳩山政権。苦しさのあまり対米交渉からこのまま逃げるのか。それとも動くのか。度量と力量が試されている。

 金口木舌 琉球新報 2009年11月12日
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怪物級の活躍「MVP」真摯な受け答えには、チームへの責任感とあくなき向上心・・・ 金口木舌 八葉蓮華

2009/11/14 23:33
 松井秀喜選手が入団する前年、ヤンキースの試合を本拠地で観戦したことがある。相手の豪腕投手に押さえ込まれて完敗。熱狂的なファンのブーイングは罵声(ばせい)に近く、怖さを覚えた

ワールドシリーズ第6戦。松井選手は6打点を挙げ、チームを優勝に導いた。試合中にあの辛口ファンが総立ちで「MVP」コールを送るのを見て鳥肌が立った。けがを克服し、最優秀選手にふさわしい打棒で彼は「夢」を実らせ、放出を盛んに主張したニューヨークの新聞も「怪物級の活躍」と称賛した

頑健な体を生かした鋭い打撃と堅守で不動の定位置を確保していた2006年に手首を骨折し、順風満帆だった選手生活は暗転する。痛むひざの手術に2度踏み切り、限界説もささやかれた

不調が続いたり、けがで満足なプレーができない時、無言を貫く選手もいるが、ひざが痛んでも松井は取材を拒まない。知人のスポーツ紙記者が理由を聞くと、こう答えたそうだ

「成績が悪いほど、質問は厳しくなる。それはチームに貢献できない自分の責任だ。つらくても答えることで日々のプレーを反省でき、次の進歩につなげられる」と

「人が良すぎる」とまで評される真摯(しんし)な受け答えには、チームへの責任感とあくなき向上心が包含されている。「野球の神様」は苦しみ抜いた末に折れない心を獲得した男に優しくほほえんだ。

金口木舌 琉球新報 2009年11月8日
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人は石垣 人は城「会社をつなぐ」いかなる組織も人によって決してしまう・・・ 金口木舌 八葉蓮華

2009/11/13 23:59
 新聞社にはいろいろな電話がかかってくる。記事に対する批判や誤りの指摘、問い合わせなどのほか、人生相談的なものもある

先日、中年の男性からの電話は医療機関への怒りに満ちたものだった。同居する親が尻餅(しりもち)をつき歩行困難に陥った。救急病院で診てもらったところ骨に異常はないとのこと。2、3日後に転院を勧められ、かかりつけ医に移った

そこは2代目が継いでおり、職員も多くが入れ替わっていた。一日中痛みを訴える親は“わがまま”の烙印(らくいん)を押され、追い出されるように3軒目へ。痛みの原因は尾骨骨折。適切な治療と手厚い看護で元の状態に戻ったという

電話の男性は「いろいろ経験したが、善しあしは働く人に左右されるんですね」と語った。武田節の一節に「人は石垣 人は城 情けは味方 あだは敵」とある。いかなる組織も人によって決してしまう

創業何百年の老舗といえども一夜にして瓦解してしまうことがある。ここ数年の事例が如実に物語っていまいか。社員と対話がなく、幹部の忠言に耳を貸さなかったと報じられた老舗企業もあった

先月、本紙経済面に連載された「会社をつなぐ」では、一人を大切にする経営姿勢がうかがえた。製造業のある社長は、常に作業服で現場に出た。「すべては人に帰結する。課題は社員と共に汗して語り合った」と事もなげに話した。

金口木舌 琉球新報 2009年11月7日
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